
なにをすればいいの。
どこへいけばいいの。
ただそばにいたい。
ただそこにいるだけでいい。
あなたの近くにいけるようになるには。
僕は何になればいいの?
今日も昨晩遅くまで手直しを加えた設計図の写しを持って僕は町を歩く。
気温は昨日よりも暖かい。
この分ならマフラーはいらないだろうとコートと手袋だけできたのは正解だと思う。
本当は手袋もいらないほどだったけれど、手がかじかんですぐ仕事にかかれないと
困るだろうと念のため。
そう、手が温まるまでの間さえ惜しいほど僕には時間がない。
胸を病んでいるのだ。
医者には入院を何度も勧められていたが、僕は全て断ってきた。
もうあまり長くないのも分かっている。
だけれど僕にはどうしてもやりたいことがあって、喜ばせたい人がいて、その人に全
てを見て欲しくて、そのためには病院とかサナトリウムとかに入っている暇なんてな
いんだ。
それに僕は病気を知ったときから夢を見るようになっていた。
その中で自分は兄を探して旅をしている幼い少年で、この世界とは違う世界で暮ら
し、失われた技術であるはずの錬金術を使っている・・・・だなんて。
不思議すぎて奇妙でありえない夢。
普通の人ならば鼻で笑い飛ばすような信憑性も何もないもの。
でも僕は知っていた。
全て分かっていた。
それを疑うなんて出来なかったんだ。
僕はその夢の意味を知っている。
知ってしまったんだ、何もかも。
見始めたときは夢の世界すらおぼろげだったのに、病状が進んだ最近ではもうほとん
ど現実と変わりないほどリアルな夢となってきた。
その中で僕は色々知ってしまったんだ。
夢の中の世界はあの人が元居た世界で、夢の中の僕はあの人の弟で、あの子はあの人
を探していた。
今もきっと会えることだけを信じてただ探している。
それを知ったときの衝撃を誰がわかってくれるだろう。
あの人が僕を通して誰かを想っているのは知っていたけれど、いつかそれを知ってし
まう覚悟もしていたけれど。
こんな皮肉があるだろうか。
じゃあ僕は、僕はいったい何のために生きているんだろうか。
僕だって聖人君主じゃない。
そんな風に絶望した時だってあった。
でも。
そのまま得体の知れない醜い感情に囚われて、何もかもを憎むようになるにはあの子
は幼くて真っ直ぐすぎたし、僕はお人よしでお節介すぎた。
君が少しでも憎むべき対象であれば僕にはいくらか楽だったのかもしれないのに・・・・。
だが、僕は残り少ない人生は誰かを呪って過ごしたくはなかった。
僕がしたかったのは、自分が満足行くように誰かのために人生を捧げることだった。
それに気づいた瞬間、何かが落ちたように僕の心にはまり込んだ。
もう、覚悟は決まってしまったんだ。
珍しく一番乗りに現場に着いた。
さっそく机に設計図を広げて試行錯誤をする。
とはいってもほぼ完成に近づいていて、ほとんどが確認作業なのだけれど。
でもやっぱり手袋をしてきて正解だった、作業がスムーズに進んでいく。
来月はカーニバルだからどうしてもそれまでに完成させて、試験したりしたいんだ。
あのロケットが空高く飛ぶ瞬間をエドワードさんに見せたいんだ。
あれはいつかきっと彼の役に立つ、そんな気がして・・・・。
そうしたら、少しは僕のことも覚えていてくれるかな?
そうだとしたら、そうじゃなくったって、あなたと会えただけで僕はこの時代に生ま
れて生きることが出来て・・・・本当に幸せだと胸を張って言えることが出来るよ。
本当に、あなたに会えてよかった。
あなたの近くにいけるようになるには。
僕はどこへ行けばいいの。
何をすればいいの。
何になればいいの?
そうずっと思っていたけれど、もうやめにするよ。
僕は気づいた、自分のやるべきことに。
これは僕にしか出来ないんだ、そう信じてる。
でもね。
本当に本当は。
今過ぎ去ろうとしている全ての瞬間とここにいるあなたを抱きかかえてどこかへ飛び
去れたらいいのに・・・。
そう思っているんだけれど。
そのことは内緒にしておきます。
それと、夢の中の君へ。
こんなことを言うと、君は困るかもしれないね。
きっと君は僕から全てを奪っていくんだろうけれど、君の心の中は凄く居心地がよく
て凄く安心したんだ。
だから僕はちっとも後悔していないし、君を恨んだりもしていないんだ、本当にそう
なんだよ。
ただ、君のことが知れて良かった。それだけなんだ。
未来に限りがあるのは誰だって同じこと。
いつか過ぎ去る時が近い将来に僕を溶かしてしまっても、この歴史は消えてなくなら
ないんだ。
だから。
どうか。
僕がここにいたことを。
忘れないでください。
あなたの命が尽きる最期の瞬間まで。
僕のことを。
忘れないで。
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2005.11.17/From:ハチイチさん(ダカユウ。)
ハチイチさんから追悼文頂いてしまいたましたーー!!!ぎゃーーー!!!!すごいハチイチさんどうしよう!!
ありがとうありがとう本当ありがとうー!!マジ嬉しいよ…ハ、ハイデリヒーーー!愛しい。愛しすぎる…!
なんかすごいすごい切なくて、でもハイデリヒの優しさがものっそい滲み出てて堪らないです…!!
あぁ風邪でダウンしてたり色々忙しい中ほんとにほんとにこんなステキな文をありがとほね…!(感涙)